カスハラ対策のニュース、制裁的公表の危険性と正当化の根拠。
カスハラ対策として、氏名公表が検討されているようだ。(カスハラ防止条例案 全国初「カスハラで氏名公表」の制裁措置も 来年4月の施行目指す 三重・桑名市 - 名古屋テレビ【メ~テレ】https://www.nagoyatv.com/news/?id=027688 )
制裁措置としての氏名公表について。如何なる論理で「氏名公表」が制裁になると説明されているのだろうか。共同体からの非難や私刑が生じる可能性を視野に置いて、その発生可能性を背景に機能する一般抑止効果を狙ったものなのか。共同体からのなんらかの不利益の可能性を視野に置いたものなのか。
””最終的にカスハラをためらう「抑止効果」を期待して、氏名公表までを盛り込んだ内容になったといいます。””
(カスハラ防止条例案 全国初「カスハラで氏名公表」の制裁措置も 来年4月の施行目指す 三重・桑名市 - 名古屋テレビ【メ~テレ】https://www.nagoyatv.com/news/?id=027688 )
>>””近年,国や地方公共団体の行政機関の別を問わずに,法令による義務や行政指導に従わない等の事実の公表が導入・実施される例が徐々に増加す る傾向にあり,このような公表は,行政機関による公の秩序に反するよう な公的規制に従わない者に対して経済上の不利益を含めた社会的制裁を国 民・住民一般の反応に期待する行為である。””
(天本 哲史. 行政による制裁的公表の処分性を争点とする判例の傾向と分析 : 続・行政による制裁的公表の処分性に関わる法的問題に対する研究 https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R000000004-I031365621 )
>>””天本(『行政による制裁的公表の法理論』2019)は、行政による制裁的公表は、恥辱感を相手方に与えることに加えて、 今は存在しない恥辱刑における「晒し」と同じように、名誉感情を侵害するに止まらず、 国民・住民に不利益となる情報を公表として公表される者の社会的評価を客観的に低下させる制度と位置付ける。””
(蓮實憲太 〔投稿論文〕条例による制裁的公表の現状と課題~空き家条例における公表をモチーフとして~ 110頁 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jichisoken/46/501/46_107/_pdf/-char/ja )
>>””しかしながら,行政による制裁的公表は,かつての中世において広く用いられたが少なくとも本邦では既に廃止された名誉刑の一種であるいわゆる「恥辱刑」や「晒し刑」 を連想させるような行為であり, さらに公表の制裁的効果の影響・程度の 如何は情報の受け手の国民・住民の反応に期待することになるから,公表 される者に対する社会構成員による村八分や人民裁判のようなあるいは深 刻な風評被害を生じる社会的排除による権利・利益の過度な侵害を誘発す る危険性を有するものであり,その実施には慎重であるべきである””
「行政による制裁的公表の処分性に 関わる法的問題に対する研究 」桃山学院大学学術機関リポジトリ 天本哲史 2013https://stars.repo.nii.ac.jp/record/253/files/%E5%A4%A9%E6%9C%AC%E5%93%B2%E5%8F%B2.pdf )
天下哲史『行政による制裁的公表の法理論』読みたいけれど高くて尻込み。高田倫子「制裁的公表に対する権利保護」行政法研究 45号(2022 年)という論文もあるようだ。
「行政による制裁的公表の処分性に 関わる法的問題に対する研究 」桃山学院大学学術機関リポジトリ 天本哲史 2013https://stars.repo.nii.ac.jp/record/253/files/%E5%A4%A9%E6%9C%AC%E5%93%B2%E5%8F%B2.pdf )の注82,83は危険性を示唆する意見を列挙しており、非常に参考になる。