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『宗及他會記』「籠棚ニ霜夜ノ天目、臺黒、三色しこめて」の意味

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『宗及他會記』「籠棚ニ霜夜ノ天目、臺黒、三色しこめて」の意味

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 『宗及他會記(宗及他会記)』に「籠棚1ニ霜夜ノ天目、臺黒、三色しこめて、京ノ馬場所持之合子金色也、人數 宗及 道是 宗訥 我等同道申候」とある2

 ここで、「籠棚ニ霜夜ノ天目、臺黒、三色しこめて」とは何を意味するのであろうか。「霜夜ノ天目」とは霜夜という名の天目茶碗であろうか。「臺黒」とは、黒い天目台のことだろうか。では「三色しこめて」とはなにか。
 中島眞瑞3は同じ箇所を紹介した文で、以下のような説明を加えている。すなわち「籠棚(こもりたな)に霜夜ノ天目、臺黒、三色しこめて(茶杓、茶筅、茶巾の三ッを入れて)」4と。中島氏の説明では、「三色」がここでは「茶杓、茶筅、茶巾」を意味することになる。
 なるほど、辞書のサイトで調べると色という漢字には「種類」という意味があるらしい5。ここでの「三色」とは「三種」を意味するのであろう。では、その三種は「茶杓、茶筅、茶巾」のことを指すというのは常識なのだろうか。
 試しにgoogleの検索エンジンで、「”三色” ”茶杓” ”茶巾” ”茶筅”」と調べると、近藤道恵筆書状
を紹介するサイトで、「道恵が受注の家具に加えて3色(茶杓・茶巾・茶筅あるいは、釜・水指・建水)などを使いの者へ渡したことや」と解説をしているものがあった6
 更に利休の茶会等を説明するサイトで「三色仕込とは、茶杓茶筅茶巾。この当時は茶筅は茶巾の上に軸を落として穂先を上にしていた時代である(堀内宗完茶道雑誌平成2年2月号)」と説明するものもあった7
 また、茶道の世界では「茶碗、茶筅茶杓の三点セット」を「茶道具の三種の神器」と呼んだりもするようである8
 『分類草人木』では以下のような文もあるらしい9

「茶筅、柄杓、茶巾の三種のうち、一種は新しきを用いるべし。
そのうち茶巾は常に新しいきを好むべし。
柄杓は新しきはいかにも初心者に思われるべきものなり。
茶筅も、二、三度使いたるよし。」

以上。





脚注

  1. rin注:こもりだな【籠守棚】のことだろう。明智光秀公顕彰会・機関紙「桔梗」34号8頁でも「籠棚(こもりだな)」と補足している。 ↩︎
  2. 以下の各web頁でも紹介されている。「明智光秀 – 名刀幻想辞典」(https://meitou.info/index.php/%E6%98%8E%E6%99%BA%E5%85%89%E7%A7%80)、「八角釜(はっかくがま)」(https://verdure.tyanoyu.net/kama_hakkaku.html)、「うろたえる紙魚は泳ぐ・・・・・・・・:へうげもの1」(http://blog.livedoor.jp/touxia-book/archives/10220840.html) ↩︎
  3. 明智光秀公顕彰会 代表幹事 ↩︎
  4. 中島眞瑞(2024), 「読むこともできる 明智光秀公年表⑪」明智光秀公顕彰会・機関紙「桔梗」34号8頁 ↩︎
  5.  (「種」とも書く)種類。「—とりどり」「三 (み) —選び出す」」(色(いろ)とは? 意味・読み方・使い方をわかりやすく解説 – goo国語辞書 https://dictionary.goo.ne.jp/word/%E8%89%B2_%28%E3%81%84%E3%82%8D%29/)(出典:デジタル大辞泉(小学館)) ↩︎
  6. 「近藤道恵筆書状 | Keio Object Hub: 慶應義塾のアート&カルチャーを発信するポータルサイト」(https://objecthub.keio.ac.jp/ja/object/334) ↩︎
  7. 「利休の茶会を主体に、主な出来事(利休百会記は除く) | wabicyaのブログ」(https://ameblo.jp/zizino0929/entry-12818080637.html) ↩︎
  8. 茶道具の基本的な用途とは?役割を知って深める茶道の世界 – 日晃堂マガジン https://nikkoudou-mag.com/archives/3037/ ↩︎
  9. 「茶道具 翔雲堂 岡本 柄杓とは」(http://shoundo.jpn.com/tool/hisyaku.html) ↩︎

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